データセンターの設備管理で役立つ資格は?電験三種を軸にした優先順位を所長が解説

「データセンターで働きたいけれど、どの資格を取ればいいのか分からない」「ビルメン4点セットは持っている。次に何を取れば、データセンターで評価されるのか知りたい」。この記事は、そんな方に向けて書いています。

私は外資系データセンターで設備管理の所長をしています。電験二種、第一種冷凍機械責任者、第一種電気工事士、消防設備士甲種4類などを持ち、電気主任技術者として選任されて現場を見てきました。その経験から、データセンターの設備管理で役立つ資格を、優先順位をつけて紹介します。

※試験制度・法令は2026年10月時点の情報です。受験の前には、各試験の実施団体の最新情報を確認してください。

この記事で分かること
  • データセンターで役立つ資格の優先順位
  • 電験三種・二種・一種の範囲の違い(電圧の線引き)
  • 冷凍機械責任者・電気工事士・消防設備士・危険物・エネルギー管理士の使いどころ
  • 資格を取る順番のモデル
目次

結論:データセンターで役立つ資格の優先順位

先に結論をまとめます。データセンターの設備は「電気」と「冷却」が中心なので、優先順位もこの2つが上に来ます。

優先度資格データセンターで役立つ場面
最優先第三種電気主任技術者(電験三種)受変電設備の保安監督、電気主任技術者への選任
高い第二種電気主任技術者(電験二種)受電電圧が5万V以上の特高受電の施設の保安監督
高い冷凍機械責任者(第三種〜第一種)チラーなど冷凍設備の保安
中くらい第一種・第二種電気工事士電気工事の作業、業者の作業内容の理解
中くらい消防設備士(甲種4類・3類)自動火災報知設備、ガス系消火設備の理解
中くらい危険物取扱者 乙種第4類非常用発電機の燃料の管理
伸ばしたい人向けエネルギー管理士省エネの管理、PUEの改善

ここからは、それぞれの資格がデータセンターのどこで効くのかを説明します。

電気主任技術者(電験三種・二種)

データセンターで最も評価される資格

電気主任技術者は、事業用電気工作物の工事・維持・運用の保安を監督する人です。電気事業法で、設置者は電気主任技術者を選任することが求められています。データセンターは大量の電気を使う施設なので、この資格の価値がとても高い職場です。

私は電験三種に5回目で合格しました(4回不合格、受験期間は4年以上)。合格した翌月に電気主任技術者として選任され、資格が「持っているもの」から「責任を引き受けるもの」に変わったのを覚えています。

三種・二種・一種の違いは「電圧」

電気主任技術者は、監督できる範囲が電圧で分かれています。

種別保安の監督ができる範囲
第三種電圧5万V未満の事業用電気工作物(出力5,000kW以上の発電所を除く)
第二種電圧17万V未満の事業用電気工作物
第一種すべての事業用電気工作物

ここで注意したいのが、「特高(特別高圧)」という言葉です。電気設備の技術基準では、7,000Vを超える電圧を特別高圧といいます。つまり、特高で受電している施設でも、受電電圧が2万V台なら電験三種の範囲に入り、6万V台なら電験二種以上が必要になります。

電験の種別と電圧の範囲

大規模なデータセンターほど受電電圧が高くなる傾向があるので、電験三種を取ったあとに電験二種を目指す価値は大きいと感じています。私も特高の現場に関わる中で、免状の範囲を意識するようになり、電験二種に挑戦しました(三種合格から3年で取得)。

試験の概要

電験三種の試験は、一般財団法人電気技術者試験センターが年2回(上期・下期)実施しています。理論・電力・機械・法規の4科目で、パソコンで受けるCBT方式と、筆記方式のどちらかを選べます。科目ごとの合格は一定期間持ち越せるので、何年かに分けて合格を目指す人も多い試験です。

冷凍機械責任者(第三種・第二種・第一種)

データセンターは、冷やす設備が建物の中心にあります。チラーなどの冷凍設備は高圧ガス保安法の対象になるものがあり、一定の規模以上の設備では、冷凍機械責任者の免状を持つ人の中から冷凍保安責任者を選任します。

選任できる範囲は、設備の「1日の冷凍能力」で決まっています。

1日の冷凍能力冷凍保安責任者に選任できる免状
300トン以上第一種
100トン以上300トン未満第一種・第二種
100トン未満第一種・第二種・第三種

免状に加えて、一定規模の設備での1年以上の製造(運転)の経験も求められます。また、設備の種類によっては冷凍保安責任者の選任が不要なものもあります。自分の現場の設備がどの区分に当たるのかは、届出の書類を確認するのが確実です。

データセンターのような大型の冷凍設備を持つ現場では、上位の種別の価値が上がります。まずは第三種で冷凍サイクルの基礎を固め、現場の規模に合わせて上位を目指すのが、無理のない進め方だと思います。

電気工事士(第一種・第二種)

電気工事士は、電気工事の作業をするための資格です。第二種は一般住宅や小さな店舗などの一般用電気工作物、第一種はそれに加えて、最大電力500kW未満の自家用電気工作物(需要設備)の工事ができます。第一種は、5年ごとの定期講習も義務づけられています。

ここで知っておきたいのは、最大電力500kW以上の需要設備は、電気工事士法の資格の対象から外れ、電気主任技術者の監督のもとで工事をする、という仕組みです。データセンターは500kW以上の施設しか無いと言っても過言ではないので、法律上は電気工事士の資格が求められない場面もあります。

500kWの境目。

それでも私の現場では、電気の作業に入る人には電気工事士の資格を求めるルールにしています。業者の作業者の資格も、作業の前に確認しています。「法律上できるか」と「この現場でやっていいか」は別に考える、というのがその理由です。

私はビルメンになる前に第二種を取り、電験三種のあとに第一種を取りました。電験三種の免状があると、第一種電気工事士の試験で学科試験が免除され、技能試験から受けられます。

消防設備士(甲種4類・3類)

消防設備士は、消防用設備の工事・整備・点検に関わる資格です。甲種は工事・整備・点検、乙種は整備・点検ができます。データセンターと関係が深いのは、次の2つの類です。

  • 第4類:自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備など
  • 第3類:不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備など

サーバー室では、水を使わずガスで火を消す設備がよく使われます。この設備は自動火災報知設備と連動して動くので、火報の仕組みと消火設備の仕組みの両方が分かると、誤作動を防ぐ管理や、点検の立ち会いで役に立ちます。

点検や工事そのものは専門の業者に任せることが多いですが、内容を理解して立ち会えるかどうかで、現場の安心感は大きく変わります。私は甲種4類を、ビルメン4点セットのあと、電験三種の前に取りました。

危険物取扱者 乙種第4類

データセンターには、長い停電に備えた非常用発電機があり、その燃料として軽油や重油を貯めています。軽油は消防法の危険物(第4類第2石油類)で、指定数量は1,000Lです。重油(第3石油類)は2,000Lです。

指定数量以上を貯める施設は消防法の許可が必要な施設になり、危険物の取り扱いには、危険物取扱者の資格を持つ人か、その立ち会いが必要です。指定数量の5分の1以上で指定数量未満の場合も、市町村の火災予防条例による届出などの対象になります。燃料の受け入れや点検に立ち会うときに、この知識があると判断が早くなります。

エネルギー管理士

データセンターは使うエネルギーが大きく、省エネ・非化石転換法の対象になる施設が多くあります。年間のエネルギー使用量が原油換算で3,000kL以上の工場・事業場は第一種エネルギー管理指定工場等、1,500kL以上3,000kL未満は第二種に指定されます。

製造業など5業種(鉱業、製造業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業)の第一種指定工場等ではエネルギー管理士の中から「エネルギー管理者」を、それ以外の業種や第二種指定工場等では「エネルギー管理員」を選任します。エネルギー管理員は、エネルギー管理士の免状か、エネルギー管理講習の修了で選任できます。

さらに、データセンター業には、2030年度までにPUEを1.4以下にする目標が示されています。2026年4月からの新たな措置では、2029年度以降に新設するデータセンターにPUE1.3以下という基準が設けられ、2026年度提出分の定期報告から、PUEなどデータセンターに関する項目も加わりました。省エネの数字に責任を持つ立場を目指すなら、エネルギー管理士の知識は強い武器になります。

ビルメン4点セットはデータセンターで役立つか

ビルメン4点セット(第二種電気工事士、危険物取扱者乙種第4類、第三種冷凍機械責任者、二級ボイラー技士)は、データセンターでも基礎として役立ちます。電気、燃料、冷凍の3つは、ここまでで紹介したとおりデータセンターの中心の設備とつながっています。

一方で、二級ボイラー技士は、ボイラーを持たない施設では直接使う場面が少なくなります。4点セットは「入口」として持っておき、その先は電験と冷凍の上位資格に力を入れるのが、データセンターを目指すうえでは効率的だと考えています。

取得の順番のモデル

参考までに、私が資格を取った順番を紹介します。

  1. 第二種電気工事士(職業訓練校の卒業後、最初の現場に入る前)
  2. ビルメン4点セットの残り
  3. 消防設備士甲種4類
  4. 電験三種(5回目で合格)
  5. 第一種電気工事士(電験三種の免状で学科免除)
  6. 電験二種(三種合格から3年)

これから目指す方には、次の流れをおすすめします。

  • まだ資格がない人:第二種電気工事士 → 4点セットの残り → 電験三種
  • 4点セットを持っている人:電験三種を最優先に。並行して冷凍の上位資格
  • 電験三種を持っている人:第一種電気工事士(学科免除を活用)と、電験二種
  • 所長や管理職を目指す人:電験二種に加えて、エネルギー管理士

資格より先に見られること

最後に、採用する側として伝えておきたいことがあります。資格は大事ですが、面接で私が最終的に考えるのは「この人は現場に入ってから、自分で動けるか」です。

電験三種を持っていても、点検記録の数字の意味を説明できない人より、資格は少なくても「この数字が先月から少しずつ上がっていたので報告しました」と話せる人のほうが、現場では頼りになります。資格は、その力を証明しやすくしてくれる道具です。取った資格で何ができるようになったかを、自分の言葉で話せるようにしておくと、データセンターへの道はぐっと近くなります。

面接では、資格の数よりも「その資格で何ができるようになったか」を聞いています。準備のときに一度、自分の言葉で書き出してみてください。

まとめ

  • データセンターの設備は電気と冷却が中心。最優先は電験三種
  • 特高でも受電電圧で必要な種別が変わる。5万V以上なら電験二種以上
  • 冷凍機械責任者は設備の冷凍能力に応じて上位を目指す
  • 電気工事士、消防設備士、危険物は、設備と業者の作業を理解する土台になる
  • 省エネの要求が強まる中、エネルギー管理士の知識の価値も上がっている

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